MASAmatix from AUDIO ACTIVE「MOVIN'」CD
葉族の帝王からフロントマンがソロで"動き出す" ここ数年は沈黙を続けるオーディオ・アクティヴ…その中心人物が遂にソロアルバムを発表! 野太いリズムとダブの幻惑を備えたスペーシーでサイケな極上のブツを、この国のフロアにもたらす。 この国のダブ・サウンドを代表するバンドでありながら、ここ数年は沈黙を続けるオーディオ・アクティヴ……その中心人物がついにソロ・プロジェクトにて本格的に"動き出す"。MASAmatixのファースト・ソロ・アルバム『Movin'』が激動の2011年夏を前にリリースされる。野太いリズムとダブの幻惑を備えた極上のブツを、この国のフロアにもたらすのだ。 1990年代〜2000年代初頭、オーディオ・アクティヴというバンドが居なければ、いまのようにこの国のダンスフロアやロックフェスなどにここまで"DUB"という言葉が聞かれることはなかったのではないだろうか? また彼らと言えば、1994年にUKダブの巨頭のエイドリアン・シャーウッドに認められ〈ON-U〉からリリースするなど国際的な舞台においてもその低音を響かせていたバンドだ。その活動は、ある世代にとってはトラウマのようだ。現在でもサウンドを選ぶ際にリファレンスされる"DUB"というフィーリングのなかに刷り込まれていると言っても過言ではないだろう…『Happy Happer』や『Back To The Stoned Age』のタイトルに象徴されるような、あの奇知とユーモアに彩られた啓蒙的な示唆も含めて。 しかし、ここ数年、バンドはいくつかのライヴを除き、残念ながら沈黙というに等しい状態だ。そんななかでの、バンドのサウンドの要であり、そしてときにはそのフロントマンとしてヴォーカルをとってきたMASAmatixの念願のソロ・リリースをここに開始するのだ。すでにソロとしては、ここ数年、各種イヴェントや、昨年の朝霧JAMでのライヴ/DJでそのサウンドを披露している。そのため、耳の早いファンは、すでに体感してるかもしれない。 ソロ・ファースト・アルバム『Movin'』は、長い間、MASA自身のなかで温められてきたサウンドだと言う。「大げさなことを言うと構想10年ぐらい。オーディオ・アクティヴで使えなかった曲を時間があるときにいろいろいじったりしてるうちに、なんかだんだんそういうソロでやりたいというような欲が出て来て」(以下「」内は表記が無ければ本資料用に収録したMASAmatixのインタヴューより) そして、それらの作品をまとめたアルバムのコンセプトは、随分とストレートな欲求からきている。「バンドでできなかったこと、やれそうにならなかったことをやっていきたいというのはぼんやりあったので。あとは、まぁ、基本的にダンス・ミュージックというか踊れる曲が好きなんで、それは実際体を動かさなくても、気持ちが高揚してくる曲というか」 ダンスということに本作はことさらフォーカスして作られたのだという。こうしたアティチュードは、アルバム・タイトル『Movin'』へと結実していった。「くよくよしてたり、壁にぶち当たってたとしてもすごいイヴェントとかライヴに行って、本当にすべてを忘れて音楽のなかに入って踊りまくったりすると、本当に心の垢が出て行くというか、心が晴れた感じになるんですよね。それがあるからまた次の日ががんばれるとか、困難に立ち向かえるとか、それが絶対あると思うので」 この姿勢は本作の1曲目、唯一のカヴァー・ソング。ボブ・マーリーの"Them Belly Full (But We Hungry)"にもつながっていく。この曲はボブの名盤中の名盤とも言われているライヴ・アルバム(『Live!』)や『Natty Dread』などにも収録されている。件のライヴ・アルバムでは、その印象的なイントロだけで客席からは大きな歓声がわき上がる。この曲を、アルバムでは、さらにダンサブルでアップテンポなリディムへとアップデートさせている。「この曲のメッセージというか内容が本当に自分の音楽をやっていく上での信条というか座右の銘にも等しいところがあって。"Forget your troubles and dance"っていうのが、本当に肝に命じているという感じですね。音楽の力というのはそこだと思ってて」 そしてこの曲で力強いヴォーカルを聴かせているのは、いまや元ドライ&ヘビーという肩書きもいらないほど、自らのバンド/レーベルを率いて勢力的に活動しているソロ・シンガー、LIKKLE MAIだ。さらにこの曲の他にもアルバムのリードとも言えるトラック"In Your Eyes"でも参加している。「とにかく女性ヴォーカルものをやりたいというのは前からあったし、それが作品としてできたのは本当にうれしいなと思ってて。今後もどんどんやっていきたいですね」 ヴォーカリストに限らず、こうした参加アーティストはサウンドにも影響を与えていると言えるだろう。「ソロ・アーティストなんで尚更なのかもしれないですけど、いろんなアーティストと一緒に交流して、自分も刺激も受けたいし、いろいろとその人との化学変化を楽しみたいなと思ってたのはあるんで。そういう部分はいままでやれなかった部分ですかね」 全体的なサウンドとしてはダブを基調にさまざまな要素が組み込まれているという部分で、本作はオーディオ・アクティブとはそう遠くないところにいる。しかし、ヘヴィー・ロック的な文脈もミックスされたバンドのサウンドよりも、このソロ作は、よりレゲエやダブの影響を色濃く見せていると言えるだろう。参加したアーティストたちは、前述のLIKKLE MAIに加えて、ボブのカヴァーでギターを響かせているのがTHE K(LIKKLE MAI BAND / ex.DRY & HEAVY)。3曲目"Bongo Tango"や7曲目"On The Move"で荒々しくファンキーなトランペットやトロンボーンを響かせているのは関西の伝説的なスカ・バンド、元デタミネーションズ、現在はソロをはじめ、客演でも数多く活躍しているicchie。さらには"Fly high"で先鋭なラップを響かせているのは元MELONMANの斉藤功だ(ちなみに本作ではMASAmatix自身はヴォーカリストよりも、サウンド・プロデューサーに徹している)。 逆にこれらのアーティスト参加曲のクレジットを見て驚くのはゲスト参加曲以外の曲の音色であったりする。icchieの参加曲以外のぶ厚いホーンなどは、すべてMASAの手で作られたものだという。もうひとつサウンドで驚く部分はリズム・デリバリーの多彩さだ。こちらもMASAによってすべての曲はサンプリングと打ち込みで作られてるのだという。そして現在この原稿を書いているのはマスタリング以前の音源を聴きながら書いているのだが、そこまでサウンド的に違和感を感じないクオリティとなっていて、驚くばかりだ(マスタリング後さらなる強力なサウンドになっていることは想像に難しくない)。サウンド・プロデューサーとしてのポテンシャルの高さを遺憾なく発揮していると言えるだろう。 そしてオーディオ・アクティブのジャケットやPVのセンスにもあった、チャーミングなユーモア・センス(例えば5曲目"Siesta"や9曲目の"Dokuro Police")もスパイスのようにアルバムに効いていることもサウンド面で忘れてならない部分だろう。前述のMASAmatix本人の言葉のように、やはり最終的には、まさに"Movin'"というタイトルがそのまま当てはまるサウンドは、そのリズムが最大限の攻撃力を増す、重低音がこだまするフロアで体いっぱいに体感して欲しいものだ。 ここで、ダブやレゲエという言葉だけで矮小化できない、さまざまな音楽のエキスが溶け込んだ、スペーシーでサイケなMASAmatixによる最新のサウンド・トリップをここにお届けする。 GUEST ARTISTS ・LIKKLE MAI (ex. DRY & HEAVY) ・icchie (ex. THE DETERMINATIONS) ・THE K (LIKKLE MAI BAND / ex. DRY & HEAVY) 01. THEM BELLY FULL (BUT WE HUNGRY) feat. LIKKLE MAI, THE K ~ FORGET YOUR TROUBLES 02. SAKI-MIDARE 03. BONGO TANGO feat. icchie 04. FLY HIGH ~ DUB SHAKES THE HIGHER GROUND 05. SIESTA 06. IN YOUR EYES feat. LIKKLE MAI 07. ON THE MOVE 08. DOG KNOWS 09. DOKURO POLICE 10. ERROR ERA 11. ONE